「クマグスの森」展で触発された気づき
南方熊楠の研究・思索は広範囲にわたりましたが、その中でも、粘菌の研究が有名です。このワタリウム美術館には増殖した粘菌(専門的には変形体と呼ばれるようです)も展示されていて、その形状が実に興味深いものでした。いわゆるメッシュ構造(網目構造)に成長していて、骨髄や脾臓の細網組織やシナップスで接続されている神経細胞群を彷佛とさせる構造でした。粘菌は、網の目状の巨大アメーバのようなもので、常に微生物を捕食しているようですが、骨髄や脾臓も網の目の隙間にリンパ球や赤血球などの自由細胞(動き回れる細胞)を存在させています。小さな細胞を、捉えておくにはそのような網の目構造になるということでしょう。当然、粘菌は単純な生物ですから、神経細胞も感覚受容器も有していませんが、接触した微生物を認識し(感知して食べられるものと判断し)、体全体の形状を変化させ(体全体に情報を伝達させることで可能)、捕食していることから、体そのものが神経系であり、細胞膜が皮膚であり、細胞質、細胞内器官が筋骨格、内臓であると見ることも可能でしょう。構造は機能の表現であると改めて、確信させられた粘菌観察でした。極論すれば粘菌も人も、そんなに違わないということです。ちなみに神経系は発生学的には皮膚、粘膜の上皮と同じ外胚葉から発生していますから、細胞膜が上皮と置き換えれば、粘菌は動く神経系であると考えることができるわけです。ちなみに粘菌を使ったコンピュータを理化学研究所(http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2000/000926/)
が研究しているようですが、動く神経系ですからありかもしれません。構造、形状の意味と成り立ちを考えることは、実にエキサイティングな遊びです。以前にもどこかで触れたことがありますが、全てをDNAの設計図の視点から考えると、きっと行き詰まるであろうと、粘菌の自在な変形に通底した本質的共通形状が、教えてくれています。
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